一橋大学
ソーシャル・データサイエンス学部・研究科
グラフィックス&ビジョン研究室 (谷田川研究室)

一橋大学生向け情報

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学部・研究科について

当研究室が所属している「ソーシャル・データサイエンス学部・研究科」(2023年度設置)は、 政治学・経済学・法学・社会科学等の文系的な教養とデータサイエンスを組み合わせることで、新たな研究分野を切り開くことを目的にしています。

そのため、多くの国立大学理系の入試と異なり、学部の前期入試には数学と英語がある他は、理科がない代わりに国語と総合問題があります。 また、大学院の入試では、社会科学系の問題も試験範囲になっています。詳細は学部・研究科から提供されている「入学者選抜について」をご確認ください。

入学者選抜について: https://juken.hit-u.ac.jp/sds/admission.html

ソーシャル・データサイエンス学部・研究科で当研究室に所属する意味

研究室の教員である谷田川自身は理系学部の出身で、これまでも理工系の学部でポスドクやスタッフなどを務めてきました。 その意味で、これまでの研究内容に限って言えば、従来の理工学的な考え方に基づいた研究が多いです。ですが、たとえ技術的には理工学的なものであったとしても、 新しい技術の必要性を考えるときには、社会科学的な発想が役に立つことが多くあると思っています。

例えば、私は過去に、人物の写真画像において、顔の部分だけを他の人のものに置き換える「顔入れ替え」の技術について研究していましたが、 ご存じの通り、この技術はディープフェイクと呼ばれ、有名人に不適切な発言をさせた動画を作るなど、多くの悪用事例があることも事実です。 このようなときに、社会科学的な視点、例えば倫理的・法学的な視点から、どのような技術によって、このような悪用を技術的に防ぐかということを考えることは、 ソーシャル・データサイエンス学部・研究科ならではの視点ではないかと思います。

また、工学の研究の多くは、最近で言うところの深層学習のような新しい技術が現れたときには、それを今ある工学的な応用にどう適用するかという意味で、非常に早く研究が進む一方で、 そのような新しい技術がない時代には研究が停滞してしまう時期があることもあります(谷田川自身の個人的な感覚です)。 そんなとき、これまでの工学的、理学的な発想に基づかない、社会科学的な発想からどんな技術が必要かを考えるということは、研究の多様性を考える上でとても重要になると考えています。

ぜひ、ソーシャル・データサイエンス学部・研究科に入学する学生さんには、そのような幅広い視点から技術を見つめ直し、社会に役立つ技術をともに生み出していってほしいと思っています。

研究室について

当研究室は2023年4月に出来た新しい研究室です。そこで、自分の興味の対象に向かって、苦労を惜しまずに研究していける方に入ってきてくれると嬉しいです。

研究室では、教員と密にコミュニケーションを取りながら、研究内容に関する議論を通して、国際的な学術会議や論文誌での研究発表を目指します。

もちろん、このような国際的な場で発表できる研究は、大なり小なり、とある側面では世界の最先端が求められるため、そのような研究を学生生活の短い間にまとめ上げることには相応の苦労が伴います。 ですが、自分が興味を持って研究したことが、他の人にも面白いと思ってもらえるという経験は、何事にも代えがたい喜びがあると思います。

このような経験は、研究者となって研究を続ける場合も、社会に出て企業等で働く場合も必ず活きてくるものだと思いますので、ぜひ、目標を高く持って、研究の世界に飛び込んできてほしいと思います。

研究内容については[RESEARCH]にいくつかの代表的な研究を紹介していますので、そちらを見てみてください。 また、研究内容について深く教えてほしい、研究室を見学したいなどのご希望は大歓迎ですので、その場合は問い合わせフォームからご連絡をいただければ幸いです。 [問い合わせフォーム]

研究室での生活

基本的に、研究室には毎日 (週末は除く)来て、講義の時間以外は自分の研究に取り組んでもらうことになります。学生さんには一人一人に、研究に十分なスペックの計算機をお渡ししますので、それを占有して研究することができます。また、必要に応じて研究室所有のサーバーでも作業できます。

研究の進捗については、1-2週間に1度は教員と個人の面談の時間を設けて議論を行います。それ以外にも、研究室のメンバーで集まって、週に1回持ち回りの研究発表会や、教科書や論文の輪講を行います。

アルバイト等をすることは全く構いませんが、研究室に配属されると、生活の大部分の時間を研究に使う必要がでてきますので、自分で計画を立てて研究を進めていくことは必要になります。 また、もし研究に専念するために、アルバイトの量を減らしたいという場合には、大学生・大学院生向けの奨学金を紹介したり、研究室の仕事 (研究に関わることです)をしてもらう代わりに、 少額ですが給金をお支払いすることもできるかもしれません。金銭的なことは、学業を続ける上で、とても重要な問題なので、困ったことがあればいつでも相談してください

研究テーマについて

当研究室では、コンピュータ・グラフィクス (CG)とコンピュータ・ビジョン (CV)の分野を中心に基礎から応用まで幅広く研究を行う予定です。 教員の谷田川自身は割と基礎的な内容が好みではありますが、研究テーマに関しては、CG/CVの分野を大きく外れない限りにおいては、学生さんの興味を最優先に、 どのようなテーマであれば、研究となり得るのかを一緒に議論していきます。

研究テーマに関係するキーワードとしては以下のようなものを考えていますが、それ以外でも、まずは学生さん自身の興味を優先して考えたいと思いますので、事前にご相談をいただければと思います。

  • 画像・動画の編集手法 (風景の画像、人の画像、顔画像、絵画などの様々な画像を扱う)
  • 物理ベースレンダリング (コンピュータで光線のシミュレーションをしてリアルな映像を作る技術)
  • 三次元形状処理 (点群やポリゴンなどのデータを処理して、様々な産業への応用を目指す)
  • 上記に関連する深層学習の基礎技術 (深層学習自体の基礎というよりは、上記の応用に向けた学習方法の開拓が多いです)

おそらく、当学部・研究科に入学してくる学生さんは機械学習に興味を持っている方が多いと思いますので、その関係のキーワードもいくつか挙げておきます。

  • データ生成のためのモデル (GAN, normalizing flow, diffusion model, etc.)
  • 三次元形状を扱うためのモデル (点群畳み込みネットワーク, グラフ畳み込みネットワーク, etc.)
  • 少ないデータから有用な知見を取り出すためのモデル (few-shot learning, self-supervised learning, self-prior)

研究の進め方

当研究室の教員の谷田川は、これまでいくつかの大学の研究室で学生さんと関わってきました。優秀な学生さんと多く出会えたことが、 その一番の理由ではあることは認めた上で、多くの学生さんが学部4年生から研究を開始して、修士1年生の後半くらいには国際会議や国際論文の発表を行うことができています。

このように早い段階で研究成果がでれば、就職にもとても有利に働き、学位論文にも余裕をもったスケジュールで取り組むことができるため、 早い段階で研究成果を出せるように研究を進める (4年生の間は結構忙しい…)ことが、学生さんと教員の両方にメリットが大きい進め方であると思います。

そこで、当研究室では、最初の研究テーマの設定と、研究を開始するに当たって必要なプログラムの準備の部分は重点的にフォローし、 逆に、研究が機動に乗ってきたら、できる限り学生さん自身の興味や考え方を研究に反映できるようにアドバイスしていきます。

また、学会や論文誌で発表する論文を書く作業は、最初は時間もかかり、とても難しく感じると思います。論文発表の際には、 英語論文の添削、修正はもちろん、実験に必要なプログラムの整備などにも共同研究者の立場から積極的に関わります。

教員の関わり方

当研究室では、教員と学生さんは研究上はなるべくフラットな関係で、共同研究者として研究に取り組むことを目指します。ですから、学生さんの研究は、あくまで学生さん自身のものであるという自覚を持って、主体的に進めてもらうことが大切になります。

もちろん、研究で行き詰まったり、分からないことがあったりした場合には、教員の経験を通して、一緒に考えたり、アドバイスをしたりすることは惜しみません。 ですが、1から10まで指導教員に研究の進め方を決めてほしい人は、当研究室にはあまり合わないかもしれません (研究室全般がそうかもしれません)。

研究をがんばるメリット: 学生さんの立場から

当研究室に限りませんが、研究に真剣に取り組めば、多くの社会で役立つスキルを身につけることができます。 例えば、研究室ではプログラミングのスキルは間違いなく向上しますし、英語発表をする中で英会話のスキルもついてくるでしょう。

学会に参加する中で、同業他社で将来一緒に働く友達ができたり、国内外問わず、大学・企業のいろいろな方と知り合いになれるので、人脈はかなり広がります。 このような学会を通して得た知り合いから、就職・転職につながったり、仕事上、利害の薄い立場から相談できる仲間を得られることは、学会に参加する大きなメリットだと思います。

また、修士課程まで進めば、海外に出張する機会も1度はあると思うので、あくまで研究発表が目的ではありますが、海外旅行気分が味わえるのも、結構大きなメリットだと思います。

研究をがんばるメリット: 研究室の立場から

研究室では、学生さんがなるべく不自由なく研究ができるように、個人利用できるPCを用意したり、サーバーを整備したり、また学会に参加するための出張費用を捻出する必要があります。

これらの費用は大学からまかなわれているものではなく、日本学術振興会の「科研費」に代表されるような競争的資金、すなわち、教員が研究テーマを申請して得た研究費によってまかなわれています。

このような競争的資金の申請の際には、過去の研究業績がある程度の比重で重視されますので、研究室で継続的に研究成果が上がることは、将来、研究室に入っているであろう後輩のための研究費を獲得する意味でも非常に大事になります。

言い換えれば、研究室に配属された時に、すでに研究に必要な環境が整っているということは、間接的にせよ、直接的にせよ、皆さんの先輩方が一生懸命に研究に取り組んでくれた結果ということになります。

これは、研究室からのお願いということになりますが、研究室には上記のような事情があることを理解して、研究に邁進していただけると、とても嬉しく思います。

最後に

上記の内容を読んで、研究が難しそうだと感じたり、研究室での生活でやっていけるかと不安になっている方もいるかもしれません。 ですが、私自身は、情報科学系の学部の出身ではなく、プログラミング等に関しても、ほぼ素人で大学院から画像情報処理の研究を始めて、ここまでやってきました。 ここまで、少し厳しいことも書いてきましたが、結局は「やる気」さえあれば、必要以上に心配しなくても大丈夫です

当研究室に興味を持ってもらえたら、まずは一度、研究室訪問にいらしていただければと思います。

研究室訪問についての問い合わせ: 問い合わせフォーム


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主ゼミ・副ゼミの配属について

主ゼミの配属は、希望者の数に応じて4名前後を受け入れる予定です。主ゼミ生として配属された学生さんには、前述の内容に沿ってグラフィクスやビジョンに関する研究に取り組んでもらいます。

副ゼミ生の受け入れは、主ゼミの指導教員に相談の上、谷田川が共同研究者としてプロジェクトに参画することを前提とした受け入れを検討しています。ただし、最初の数年は、どの程度の希望者がいるか分からない部分もあるので、希望人数に応じて臨機応変に対応したいと思います。また、副ゼミの配属については、主ゼミの配属の希望者を優先し、4名を大きく上回る場合には配属をお断りする場合があることをご了承ください。

ただし、ゼミ配属とは別に研究会や輪講・勉強会に参加したい、研究についてのアドバイスが欲しいなどの希望があれば、個別にご連絡いただければできる限り対応したいと思います。

選考基準

特別な選考基準は設けませんが、希望者多数の場合には個別面談を実施して、研究テーマのマッチングを重視して選考します。

もし自分の取り組みたいテーマが本研究室とマッチするか不安な場合には事前相談も可能ですので、その場合は問い合わせフォームからご連絡ください。

募集テーマ

当ゼミ (研究室)では画像や動画、三次元形状データなどの目に見えるデータを「計算処理」することで、新たな価値創造を目指した研究活動を行います。 過去の研究では、対話的な画像・動画編集システム、画像生成AI、物理シミュレーションに基づく映像生成、視覚的特徴に基づく工業検査技術、 様々なカメラデバイスを用いた先進的なセンシング技術などについて研究をしてきました。

前述の通り、研究テーマは学生さんの希望に応じて個別に検討する予定ですが、いくつか研究テーマを挙げておきます。

2025年生向け

  • 対話的な三次元モデリングを補助する機械学習技術に関する研究
  • 三次元シーンや工業製品の理解を補助する機械学習技術に関する研究
  • 画像や文章など複数のメディアを組み合わせたマルチモーダル・ファクトチェックに関する研究
  • 三次元物体やCT画像に対する異常検知技術に関する研究
  • NeRF等の自己教師学習に基づく三次元シーンの復元技術の工学応用
  • 量子コンピューティングによる画像処理、特に大規模逆問題に対する基礎技術の構築
  • コンピュータ・グラフィクスにおける光線や力学のシミュレーションの高度化